昨日の休み、夕方、駅の南口の方にある図書館までちょっと行ってみた。図書館の近くに差しかかった時、後方から声が聞こえてきた。
「解説は中畑清さんです。いやぁ~、中畑さん、本日は、ウンウヌンかんぬん」
「そうですねぇ~、ウンヌンかんぬん」
ん?なんかの中継か?しかし、中畑清?中畑がこんな所で中継を?
どうも違う。なんか違う。どうも変だ。
不審に思った俺は、道端で立ち止まると、不自然に見えないようにPHSを出して画面を確認するふりをして、ちらっと声のする方を見てみた。
案の定である。案の定、そこには放送局のクルーの姿は無く、もちろん中畑清などいるわけもなく、ただ一人、ガリガリ君似の兄ちゃんが一人二役の架空の実況中継を大声で演じ続けている。
あー、このガリガリ君、どこ行くのかなぁ、図書館じゃなきゃ良いがなぁ。と、件のガリガリ君、図書館の前に来ると、尚も中畑さぁん、中畑さぁんと、元ジャイアンツの内野手の名前を大声で連呼しながら、迷うことなくスっと中に入ってしまった。
あちゃー、まいったな、お前も図書館か、つうかお前みたいな奴が、図書館に何の用事だ?
そもそも、図書館でそんな一人二役架空実況中継を、大声でやったら外につまみ出されるぞ、と、あれれ?、ガリガリ君の実況中継は館内に入ると同時にピタリと止まってしまった。あらら?その手の人じゃないのか?しかし、あの独り言はどう聞いても・・・・。
まずは児童書のコーナーに向かうガリガリ君。ガリガリ君の正体に興味が沸いてきた俺は後をついて行く事にした。
お、ガリガリ君、乗り物のコーナーの前で立ち止まったぞ。あ、電車の本を手に取った。読んでる読んでる。次は何だ?お、次は汽車の本か。ガリガリ君、お前、鉄ちゃんか?
そうやって、5分ほど児童書の乗り物の本のコーナーで、電車、汽車関係の本を何冊か立ち読みしたガリガリ君は、そこを離れて児童書コーナー入り口辺りの雑誌のコーナーに向かうと、一冊の雑誌を手に取った。
「鉄道ファン」
そうか、やっぱりなぁ、鉄道ファンか、お前、やっぱ鉄ちゃんなんだ、そうかそうか。
ガリガリ君が、次に向かったのは、別の雑誌のコーナー。ガリガリ君、今度は何を手にするのか。お?「メジャー・リーグ」?野球ファン?お、また別の雑誌を読み始めたぞ、何々?「相撲ファン」?!
雑誌のコーナーは早々に離れたガリガリ君、今度はスポーツ書のコーナーで、野球関係の本やら、相撲関係の本を読み始めた。
ガリガリ君は、鉄ちゃんで、野球ファンで、相撲ファン?
しかし、ここまできて、ガリガリ君は、あっさりと出口に向かった。あ、お帰りですか、ガリガリ君。外に出たら、またさっきのアレが聞けるのかなぁ、と思って、俺も後について行く。
しかし、ガリガリ君、いっこうに実況中継を始める気配はない。しばらく後をつけたが、これ以上の変化はなさそうだし、道路の向こう側に渡りそうな気配だったので、それ以上は断念した。
ああ、つまらん。もう一度さっきのあの実況中継を聞きたかった。あの、中畑清・・・・・。あ、そうか、野球ファンで中畑清・・・・・・・・・。
存外、つまらん。
| 奇人は世界を制す エキセントリック―荒俣宏コレクション2 | |
![]() |
荒俣 宏
集英社 |
