サブリミナルの嘘

「キイナ -不可能犯罪捜査官-」というドラマが昨日終わった。
カミさんが観ていたので、俺も観ていたのだが、主人公のキイナ(菅野美穂)のキャラクターの魅力が乏しい上に、菅野の演技が大根で、苦笑もののヒドイものだった。
(不可思議な事件のみを担当する刑事ということで、キイナ=奇異な、なのだろうが、このネーミングからしていかがなものか。)
ベースになっている、過去の、いわゆる「不可思議事件」についての製作者の検証が甘く、ストーリーが毎回やたらと薄っぺらいのだが、特に、昨日の最終回の話はヒドかった。
サブリミナル映像を使って犯罪を犯した犯人を、逆にサブリミナル映像を使ってハメるという話なのだが、元になっているのが、いわゆる「ポップコーン実験」なのだ。
おいおい、ちょと待て!!
「ポップコーン実験」というのは、1957年にジェームズ・ヴィカリという男が、映画のフィルムに「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」というメッセージが写ったコマを5分ごとに繰り返し挿入し、売上に影響があるかどうかを測定した実験で、この映画を上映したところコーラとポップコーンの売上が増大したとされるのだが、アメリカ広告調査機構の要請にも関らず、この実験がどのような環境で行われたかを示すきちんとした論文は提出されず、後に、ヴィカリは「実験には十分なデータが集まっていなかった」と実験結果の懐疑性を告白しているのだ。


(そんなモノを元にして、いい加減なドラマを作るなよ!!)
おまけに、この「サブリミナル映像を使って犯罪を犯した犯人を、逆にサブリミナル映像を使ってハメる」というのは、刑事コロンボの「意識の下の映像」(1973年)のまったくのパクリなのだ
やれやれ・・・・・。(サブリミナルを使って犯罪を、という点はともかく、言うまでもなく、コロンボの方が、ドラマの出来はちゃんとしている。「換骨奪胎」は別に構わないと思うが、あんなショボいものを作ってどうすんの?)
余談だが、いわゆる「100匹目の猿」現象も似たようなものだ。
宮崎県の幸島に棲息する一頭の猿がイモを洗って食べるようになり、同じような行動を取る猿の数が100匹を超えた時にその行動が群れ全体に広がり、さらに、場所を隔てた大分県高崎山の猿の群れでも突然この行動が見られるようになったという。
ライアル・ワトソンが『生命潮流』 で述べ、後に、ケン・キース・ジュニアの著書『百番目のサル』によって世界中に広まった。
しかし、実際には、初めに報告されていた逸話はワトソンの創作によるもので、高崎山はもちろん群全体に伝播したという事実も観測されていない。ワトソンは、最初、河合雅雄の論文によるものとしていたが、ワトソンの話は、その論文に反する内容であり、後に、ワトソン自身が全くの創作であったことを認めている。
日本では、船井幸雄が、自著『百匹目の猿―思いが世界を変える』でこの話を紹介し、人間にも同様の現象が存在するのではないかということで話題になったのだが、実際には上記のような有様で、苦笑を禁じえない。
有名なUFO墜落事件(とされている)、いわゆる「ロズウェル事件」も似たようなものだ。
「当時墜落したのは実は秘密実験に使用されていた気球で、後に発見された異星人の死体と言われるものは高度での人体への影響を調べるための観測用ダミーである」という政府見解を信じない連中が、飽くまでも「あれはUFOの墜落だった」と主張してるだけなんですけどね。
あああ・・・・(苦笑)
(まぁ、「ロズウェル」に関しては、アメリカ政府が何かを隠蔽しているという可能性がまったくないわけではないが)
知っていて故意にやっているのか、それとも製作者が無知で知らないだけなのか、結果や結論をちゃんと示さずに、元の現象や事件のみを面白おかしく見せて視聴者の興味をひく(はっきり言えば「騙し」)というのが、テレビ番組には多いよ。
ご注意あれ。



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サブリミナルの嘘” への2件のコメント

  1. ええ、あれ面白いという評判でしたが、そんなに酷かったんですかw
    私はコロンボ大好きでした。この話も厨房になったばかりでなんだかこー、「心理分野」に強くなった気がして夢中になりました…

  2. なんか「100匹目の猿」より前の文章が
    あちこちでブログコメントとしてコピペされてるようですよ? キイナ最終回の記事を書いた人のところに。

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